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稲垣えみ子氏『アフロ記者』と津村記久子氏『この世にたやすい仕事はない』で働く意味を考える。

この世にたやすい仕事はない 本が読みたくなる

今回は仕事を深く追求した女性のノンフィクションと、世の中にほんとにあるのかな?みたいな仕事をしている女性のフィクションを取り上げます。
本のタイトルがすべてを言い表しています。

『アフロ記者』稲垣えみ子(朝日文庫)

アフロ記者

筆者は元 朝日新聞の記者だ。アフロにされたのは記者時代だったと知り驚く。

彼女は28年間の記者生活で退職前の3年間は記名のコラムを連載していた。
新聞上で自分の署名記事を載せるという名誉と重い責任をこの本で知ることができる。
その一部をこの本で読める。アフロヘアにした経緯、冷蔵庫のプラグを抜いた生活について…と、気負いがない。

皆が経験することではないが、あくまで市民の視点であり、読者の興味を引き付ける。
その上で、外見を大きく変えるとはどんな意味を持つか。
電気のない生活を続けるうちに何が見え何が不要になるのか。
そこから社会をしっかり見つめて欲しい、という稲垣氏の呼びかけが聞こえてくるようだ。

SNSで誰でも発言できる時代となり、メディアの「偏向記事」は容赦なく叩かれる。
稲垣氏は言う。
「両論表記すればいいのか、いっそ発信しなければ」と考えるうちに新聞記事はツルンとした、引っ掛かりのないものになっていくのだと。

この本を読了してから改めて手元の新聞を読んでみれば、「遠まわしの賛成らしき記事だな」「反対意見はド直球で書くのだな」と自分で読み取る目も少し備わる気がするのだ。

 

『この世にたやすい仕事はない』津村記久子(新潮文庫)

この世にたやすい仕事はない

社会人ならフッと抱く黒い感情。言葉にする程ではない心の動きを織り込むところ。記久子さんは密かに文章に込める。

天職と思っていた仕事を辞め、短期バイトのようにいくつかの仕事をする主人公を短編小説の形式で追う。

ロードムービーのようでもある。

主人公は明晰であり、どんな仕事にも結果を残す女性だ。
少々違法な人物監視や、おかきの小袋の裏の”一言文言書き”のような仕事にも成果を上げる。
だが勤めるうちに周囲にはみえないノイズが発生する。それを機敏に感じ取るのだ。

そこなのだ。

こんな職業の方に会ったことはなくとも、自分だけが引っかかる違和感に共感し読ませるのが津村記久子氏の小説だ。
著者は徹底的に市井の視点で物語を書く人である。
生きにくそうにしている女性がどこかに明るいところを見つけていく展開は、読む希望だと思う。

『この世にたやすい仕事はない』とは本当に秀逸なタイトルだと思う。
仕事が行き詰まると思い出す。それは良書の証拠だ。

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