青木祐子氏『派遣社員あすみの家計簿』と榎本まみ氏『督促OL指導日記』を読めば財布のひもが固くなる、かも。

派遣社員あすみの家計簿

世の中、さまざまな職業の形態があり女性はそれぞれの場所で頑張っています。
今回ご紹介する2冊には、お金に関する女性たちの悲喜こもごもが垣間見えるようで、ちょっと辛いけど希望も持てる小説とノンフィクションです。

『派遣社員あすみの家計簿』青木祐子 (小学館文庫 キャラブン)

派遣社員あすみの家計簿著者の青木祐子氏は『これは経費で落ちません!~経理部の森若さん~』を書かれた方。

森若さんは自分の給金の身の丈にあったつましい生活をするしっかり者の主人公だったが、このあすみちゃんは真逆だ。
一生ものだと高価な万年筆を購入したり、手持ちがなければクレジット決済をすればいいじゃない?というスタンスの女の子なので貯金はない。

彼氏と結婚するからと軽率に正社員を辞めるが、男はただのヒモだった。彼の携帯代まで支払う浅はかな彼女だが、日々の生活にも困窮し始める。

金の援助はしないクールで頼もしき旧友の叱咤激励をうけ、駅前でのシャンプーサンプル配りの日雇いバイトから出直すあすみちゃんだ。

小遣い帳に金銭の出入りだけではなく、日々思ったことを何でも書きこむ。お金に無頓着だった主人公が出納を見直し無駄遣いを徐々に制御していくのは清々しい。成長物語である。

同時に読み手も自分のお金の管理について考えざるを得ない。軽い読み口なのに自省すら求められるのだ。

(2021.9.8追記)あすみちゃんのその2が同じく小学館文庫キャラブンで発売されました。どれくらい金融リテラシーが向上しているのか読んでみたいと思います。

 

『督促OL 指導日記』榎本まみ(文春文庫)

 

督促OL指導日記『督促OL 修行日記』『督促OL 奮闘日記』とシリーズ化されている督促OLの第3弾。

信販会社の債権回収のコールセンター、いわゆる取り立てなのだがそれを女性たちが請け負い、顧客とやり取りするさまを読むのは恐ろしい。
精神を病んで退職するのも仕方ないことだ。

顔の見えない相手に攻撃的になる顧客は自分の個人情報がほぼ全てオペレーターに見られていることを知らねばならない。暴言を吐けなくなる。

語り手の榎本氏は電話オペレーションで多額の債権回収を行う術を身につけた。そしてオペレーターを束ねる立場となった。

もともと気弱な女の子だったとのことだが、何が彼女を変えたのか。ド根性だけで務まる職業ではない。

督促電話は「お支払いの期限がきていますよ」という連絡であり、相談も承る電話なのだというメッセージを伝えていくこととのこと。オペレーションをする側の負担を少しでも軽くしたい、というどちらの側にも負担を和らげる考えからきているのだ。

そもそも手持ちがないからとキャッシングに手を出してはいけない。テレビCMで安楽にお勧めして借り手の敷居を低くしているのも一助となっている。

ちょっと借りてしまうのは些細なきっかけが多いそうだ。誰も他人ごとではないのかもしれない。
だからこそ著者は四コマ漫画入りの読みやすい本にしたのだろう。督促する側の労働環境まで知れるのはなかなかないと思う。

この2冊を読むと、ビジネス書で深く掘り下げる前に楽しく読んでお金について考えることができる。お金の勉強の導入教材にもお勧めできるのだ。

 

 

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