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『女と仕事 「仕事文脈」セレクション』。働くことを考える。

女と仕事 「仕事文脈」セレクション 本が読みたくなる

タバブックスさんという出版社の「仕事文脈」という雑誌をご存じですか?2012年に創刊されたリトルマガジン、年2回発行で2021年11月にvol.19が刊行されています。私は古本屋さんの新刊棚でよく手に取っています。「仕事文脈」の”女性と仕事”について書かれた寄稿文をセレクトして一冊にまとめたのが『女と仕事「仕事文脈」セレクション』です。スキルいろいろお仕事もさまざまな女性たちが語るのは、仕事つまり人生についてです。

『女と仕事 「仕事文脈」セレクション』

仕事文脈編集部編 タバブックス

雑誌『仕事文脈』とは

雑誌編集者出身の宮川真紀さんが立ち上げたレーベルである「仕事文脈」。過去の特集をみてみると、とても自由度が高い雑誌だということがわかるのだ。

vol.13 悩み、うざい

vol.12 お金文脈

vol.9  ごはんと仕事

vol.5   大きい仕事、小さい仕事

どの特集も興味をそそられる。通勤途中に頭の片隅に引っかかる諸問題を拾い上げている。小さくみえる問題はだいたい、積み重なって両肩にのしかかってくるものでしょう。

「仕事文脈」の寄稿文の選りすぐりを一冊にまとめたもの、が今回ご紹介する本だ。

いろんなタイプの女性たちが語るのだが、タイトルがいちいち刺さるのだ。

 

『女と仕事 「仕事文脈」セレクション』をのぞき見

☆第一章「ダメ人間がフリーランスになって1日で1か月分を稼ぐ方法とは?」石嶋未来 氏

おお! そんな方法あるんかいな?と若干の期待を込めて読む。だがもちろん石嶋さんはダメ人間ではないことが分かる。昼夜逆転しているだけである。

キャパオーバー・タイムアウトになりそうな案件を引き受け、夜型人間の石嶋さんが鬼の速度で仕上げ提出してから、寝る。という方式で賃金を得ているのだ。昼の人々には「妖精さんが仕上げてくれた」と感謝されているに違いない。

そうして得た時間とお金で、石嶋さんはやりたいことを始めている。「今できることからすぐにはじめる。」と喝破するのだ。「自由に生きる方法をいっぱい考えましょう。」と。

うらやましい。いいなと思っているだけでは自分の行きたい場所にたどり着けない。一発目からインパクトをもったお題につられ、自分自身をかえりみることになる。

 

☆第二章 「田舎→東京→次はどこ行く?」 奥山晶子 氏

山形の葬儀社で働いていた奥山さん。自宅葬儀の準備で休憩を取る暇もなかったときに、地元の奥さんたちからキュウリとゴマおにぎりを差し出される。それを食べた奥山さんはこう思うのだ。

「仕事の報酬って、本当はこういうことなのかもしれない」

奥山さんはその後東京で仕事をはじめる。努力したかいあって、生活水準を落とすことなく暮らしている。ただキュウリとおにぎりに象徴される「ゆとりや、居場所」という柔らかでありながら土に根を張った報酬は、東京にはないようだ。彼女は東京以外にも視野を広げている。

 

☆第十六章「転職しました、のその先で」 中島とう子 氏

契約社員の中島さんがこの先1年半の猶予後、契約満了だと告げられる。その会社の契約社員全てその処遇だといわれる。

仲間が次々と退職することで、業務に忙殺され別れの挨拶にも表面的な対応しかできなくなっていた中島さん。ある後輩が退職する際、涙を浮かべながら感謝されて気が動転する。後輩は中島さんの応対スキルを密かにメモし、苦手な電話対応を克服できたというのだ。

後輩にもほかの会社でも褒められたその電話対応は、一社目のパワハラ上司に教育されたものだったそうだ。対応に感心されるたびパワハラ上司を思い出すため、スキルではなくトラウマとなっていた。

「中島さんみたいになりたくて」と別れ際に言われたあと、中島さんは人知れず号泣したという。そのことが中島さんの働く人生の杖ともなった。

傷を負いながら得た技術を知らぬ間に後輩に渡すことができた。その事実に中島さんは驚きそして過去の自分や上司を許すことができたのだ。そして新たな一歩を踏み出す勇気を得た。その後転職し「仕事が楽しい」と思えるまでになった。それは後輩のあのひとことがあったからだ。中島さん自身も後輩から報酬以上の価値を得たのだと思う。

仕事や人間関係に価値を見出せなかったころの中島さんは、こう考えていた。

「これだけ技術が発達しているのだから(中略)メールとチャットとテレビ会議で済ませられる業務だってたくさんあるんじゃないか。」「そんな未来を本気で望んでいた。」

2015年11月執筆当時では遠い理想であった「未来」が、未知なるウイルスによって一気に手繰り寄せられ現実化した。

2015年当時の中島さんは考えた。無駄に顔を突き合わせて仕事する意義は、「意図せぬ知識や技術のリレー」があるかもしれないからだと。

未知なるウイルスが台頭した社会では、細々とだが確かに受け渡されてきたバトンは消滅してしまわないか。この章を読んで感じたことだ。

 

今回ご紹介した本はは「セレクション」であったが、仕事文脈本誌それぞれの号で斬新な切り口と考えが掲載されている。一度手に取って見て欲しいと思う。

女と仕事 「仕事文脈」セレクション

 

働くことを考えることは、人生を考えること

 

大手出版社にも”女性のための”お仕事雑誌はある。投資・手帳・片付け方…といった表層スキルを担っている。この分野も面白いのだが、登場する読者モデルさんがみんなバリキャリに見えて引け目を感じるところがある。ファッション誌のモデルが輝かしくみえるのと同じ思考だと思う。

スムーズに業務を進める技や洋服やメイクを美しくみせるテクニックが満載の雑誌に、負の要素を混ぜられない。それを克服したことにしたピカピカな姿しか目に入らない。

バリキャリな会社員にも美しいモデルにもきっと悩みがあるはずなのだ。みんな働く女性なのだから。別に人に相談するほどではないと思いつつ抱え込んでいる悩み。少しでもそのささくれが丸くなればいいのに。相互自助できれば素晴らしいことだ。

ひとりひとりが底辺に落とし込んだ気持ちを表に押し上げる役割がある。「仕事文脈」とはそんな雑誌だと思うのだ。

 

タバブックスさん公式ページはこちらから

タバブックスさんが「仕事文脈」について語るページはこちらから

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