【本を売るひと その4】書籍を棚に入れていこう!

棚入れは楽しいよ

今朝入荷した書籍の各ジャンルへの振り分け、無事に終わりましたでしょうか? では、間髪入れず台車の上の書籍を棚に入れていきましょう。書店員の実力が試される仕事。静かな駆け引きをしている時間です。

目次

書籍を棚に並べる

 

本の住所、棚コードを入れる

あなたの担当のジャンルに今日入荷した書籍たちを運び込んだら、新刊一冊一冊に棚の番号をつけます。まだこの子たち、棚に出せないのです…

いまや書店員もお客様も検索システムによって本の住所を調べますので、このひと手間が必要なのです。

店舗によっては、既に仮のコードが付いているかもしれませんね。その場合でも自店の棚では別の場所に置きたいということが良くあります。担当者は、本の内容をサラッとチェックして、該当する棚コードに書き換えます。

そして勝手に棚コードを増やせないチェーン展開のお店もあるでしょう。(検索データが大事な世の中なので)

その場合は、お店独自に本の間に差し込む式の見出しを作って、より細かく区分けした棚にすることもできるかもしれません。ただ書店員にもお客様にも良さと不便さがあります。

棚に見出しが出ていたとしても、特にお客様は見ていない!!  ユニバーサルデザインを目指すというか、誰の目にも分かりやすい棚を作っていく使命が書店員にはあります。

本との時間が増えるにつけ、細分化させたくなるのです。その場合でも、ぜひお客様の目線第一に考えて棚を作っていきましょう。

 

ご予約商品、取り置き商品をピックアップする

新刊予約を頂いた書籍が入っていれば、伝票と照らし合わせの上ピックアップしてください。

その際ISBNの確認を怠らずに。似たタイトルの別物をつかんでいるかもしれないのです。

本の状態(角のへこみや、ページの折れ、表紙の傷などがないか)を確認の上、お客様に連絡します。客注担当者が一括で処理するお店なら確実に引き渡しましょう。

 

新刊を棚へ入れていく

さて棚入れです。新刊を棚に並べていきます。ここが書店勤務の醍醐味です。

準新刊と呼ばれる、ちょっと前に入荷した新刊との兼ね合いや、前から売れ続けている既刊本。それらの古参の書籍たちに新刊をどう混ぜていくか。昨日まで並んでいた本との入れ替えはクリエイティブな仕事です。

もちろん「今日入った本」というような棚を設けておられる書店さんもおありでしょう。その場合でも本来入るべき棚にも、ある程度展開するのが望ましいと思います。配本が少なすぎると多面展開も難しいのですが。

同じ作家さん同士、似たテイストの本たち、今話題の内容の書籍。最近動きのない本はどれか。棚の前で素早く考え、本日の新刊をどこに出すか。昨日まで面展開(面陳)していた書籍をどこかに移動させるのか。1冊残して返品するべきなのか。

昨日までの本をただ移動させるというのは現実的ではない選択です。棚には限りがあるため、永遠に動かし続けることはできない。引くべき書籍を見定めたら、売れ行きのデータを参照にしつつ減らしていくのも棚出しの仕事です。

 

展開の引き際と新聞書評のマッチング

このように各ジャンルで考えなければならないポイントは違えど、本を入れることよりも、本を抜くこと(返品)のほうが難しく感じます。

なにせ新刊入荷の展開が早く、潤沢に棚があるお店であっても苦悩するでしょう。一か月前の新刊でも苦渋の選択をして面展開を下げ、差しで1冊程度に減らすこともよくあります。

そして、その翌週に新聞に書評が載ったりするのです。新聞の書評は大概ワンテンポ遅いのです。(あるあるなのか?とよく思います)書店に並んでから約1か月後の書評掲載はざらにあります。

店側にとっては「それ既に準新刊ですわ」というタイムラグなのです。在庫が減っている状態であることも多い。版元さんが「何月何日に〇〇媒体に載ります。テレビで紹介されます。」と事前報告くださる時もあります。しかしそれは100%ではありません。ですので見極めは大切です。

新刊を心待ちにされているお客様なら、発売日付近の初動でご購入されるでしょう。予約されている可能性もあります。

書評で内容が気になったお客様こそ、実は売り上げの裾野を広げる方々だと考えています。未知の著者の本を見にわざわざ書店に足を運んでくださること。なんて尊いのでしょう。

新刊ほやほやをご所望のお客様を満足させ、新聞書評や広告を見てゆるりと来てくださった方にも確実に本をお渡しする。それができるのが理想です。

その方々にご希望の書籍を手渡せたのなら、きっとリピーターになってくださる。売り場で安堵と後悔を繰り返しながら、棚入れとお客様対応の二刀流をきめる、それが書店員の仕事です。

 

お店が違えば棚は全然違うのです

新しい本は毎日入ってきます。新鮮な本を置くとパッと場が華やぎます。同じ書籍が同数入ってきた隣町のお店とあなたのお店。本の顔は同じでも並ぶ仲間が違えば、表情は違ってみえます。

新しい面々を手にして、毎日棚を少しずつ変化させること。それが私たちの仕事です。棚の移り変わりを楽しみにこられるお客様が少しでも増えたなら、あなたも私も職場に貢献しているといえるのです。

「この本屋にはこんな本がある」「本の並びが落ち着く」

「攻めてるなあ」「ここの棚の人、好みが似てるかも」

本が好きなお客様なら、いろんな感慨をもって棚を巡ってくださるでしょう。棚を作るあなたの意図もちょっと感じてもらえるかもしれません。棚と本の並びを通して、静かな本屋さんの中でお客様に提案していけたらいいですよね。

最後まで読んで頂いて、ありがとうございました。お互いに知識を補充して書店に向かいましょう!!

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