2023年3月さっそうと現れた『成瀬は天下を取りにいく』(略称:成天)、もう読まれましたか?
成天を読まれた方ならその後の成瀬がどう生きるのか、知りたくてたまらなかったと思います。
2024年1月、なんと一年も経たないうちに成瀬あかりのその後の歴史が刊行されようとしています。成天のその後(わりとすぐ後)の成瀬のめざましい活躍を読むことができるのです。またもや滋賀を舞台に小さく大きく走り抜けます。
『成瀬は信じた道をいく』(略称:成信)がそのタイトルです。新潮社さんのプルーフ(サンプル本)でひと足お先に読ませて頂きました。ネタバレをしないようになんとか成信の魅力をお伝えしたいと思います。
(2024年4月追記)本屋大賞2024、前作「成瀬は天下を取りにいく」が受賞しました!!すばらしい。
本屋大賞は全国の書店員が第一次投票で推したい3冊をおすすめコメント付きで投票します。その投票数で10冊のノミネート作品が決定します。
投票の権利があるのは実際に書店や関連業に勤務している人々だけ。実名と所属の登録が必須なのです。
投票者はその10冊を全て読み(泣)、第二次投票サイトにてそれぞれに愛のこもったコメントを書きます。書店員自身が売りたい!と思った3冊を順位を決めて投票して、4月初旬の結果発表となります。
今年はこの成瀬がぶっちぎりの得票数で大賞受賞となりました。もちろん私も1位成瀬で投じましたよ。2位にはこのブログでも記事を書いた川上未映子さんの「黄色い家」を選びました。成瀬と花ちゃん、真逆のキャラなんですがふたりとも10代後半ってとこがグッときます。
成天のあらすじ
ひとまず2023年発売の『成瀬は天下を取りにいく』のあらすじを。
中学3年生の夏休み、滋賀県大津市に住む成瀬あかりは慣れ親しんだ西武大津ショッピングセンター(実在した施設)が閉館するまでの日々をともに過ごすことを宣言します。その宣言を聞かされたのは友人の島崎みゆき。
島崎は成瀬のこんな突拍子もない言動や、弾丸のような行動力をほどよい距離感で眺めサポートし、そして巻き込まれていくのです。
中3の夏を西武に捧げた成瀬と島崎。ふたりはその秋、またもや成瀬の発案でお笑いコンビを組み、M-1に参戦します。それぞれ別の高校に進学した後は、一回戦敗退ながらM-1に出場したという功績を買われて、地元膳所の”ときめき夏祭り”の進行役をまかされます。この小説、主人公成瀬のおもしろさは大真面目で愚直で聡明にものごとをこなすけれど、たぶん不器用なところにあります。
相棒の島崎は成瀬の行動に付き合わされているようで、成瀬に見え隠れする弱点を補完しながら伴走しているのです。
成天の後半、高校卒業後の進路が見えてきました。なんと相棒島崎が滋賀を出てしまうかも!
それまで突拍子もないことを宣言しては即座にこなしていた成瀬。彼女のテンポが変化し始めます。二人の友情の強固さも明らかになるのです。
第1作目の詳しくはこちら↓の記事でも詳しく解説しています
第2作目、『成瀬は信じた道をいく』のほんの一部
ゼゼカラと小学生
第1作目、成天のラストは高校3年生の夏休み。ときめき夏祭りでご当地盆踊りを真剣に踊る成瀬の姿で終わりました。
すでに読者それぞれの成瀬像がきっとあり、読み終わる頃には脳裏に映像が巡っていることは間違いないのです。
宮島未奈さんの描写は読み手をどんどん引き込みます。
成瀬あかりの2作目、すっかりおとなになっていたらどうしよう、とちょっと不安になりながらサンプル本を拝読しました。
心配ご無用でした!成瀬は成瀬でした。更にパワーアップして戻ってきてくれました😭
成瀬は行動範囲をさらに広げて、いろんな人を巻き込みます。
夏が終わり2学期を過ごす高3の成瀬に新たな出会いがあります。成瀬と島崎のコンビ”ゼゼカラ”に熱烈な小学生のファンがいたのです。
第一章では小学生みらいちゃんの目を通した成瀬と島崎の姿が描かれています。
そしてみらいちゃんの生きる世界にもいろんな悩みがあるのです。信頼していた同級生に裏の感情があったなんて。みらいちゃんの悩みを聞いた島崎は、こう言います。
「どうしたってそういう時期はあるんだと思う」
『成瀬は信じた道をいく』 新潮社 (成瀬あかりの友人、島崎のことば)
さすが成瀬の相棒です。慰めるでもなく元気づけるでもなく、現状を打破すべきだとも言わない。「そういう時期」をどうかわしていくかをさらりと教えてくれるのです。
フレームインしてきた成瀬と共に、みらいちゃんの前で”ゼゼカラ”はひとネタ披露します。心が落ち着いたみらいちゃんは自分のやるべきことをしっかりやりとげるのです。
成瀬とお父さんの慶彦
成瀬あかりが通う膳所高校は実在します。東大や京大の進学率の高い進学校なのです。そこで常に「京都大学 A判定」を取り続けている成瀬ですから、堂々と京都大学の二次試験に臨みます。第1作目では成瀬のお母さんがちらりと登場したくらいだったのですが、第2作目ではお父さん慶彦の目線で一人娘あかりの受験についてが語られます。
慶彦さんはどうやら一般人のようです。成瀬あかりの父親ではありますが偏差値も野望も人並み。読者目線に近い彼が、世の親御さんと同様どきどきしながら娘あかりの受験を見守るのです。
「あかりが突然変異で生まれたディープインパクトだとすれば…」
『成瀬は信じた道をいく』 新潮社 (成瀬あかりの父、成瀬慶彦の脳内)
慶彦お父さん、なかなかの飛躍です。この豊かすぎる想像力が慶彦さんのメンタルを不安定にさせるのです。
そして受験当日、それも京大構内での異変を検知します。検知するのは成瀬あかり。そのままにはしておけない成瀬の性分と、おろおろする慶彦。睨みつけるお母さん。げらげら笑いながら、たまに身につまされながら読んでくださいね。
ただ発表があるまで受験はわからないもの。途端に読者は慶彦目線に戻って結果を知ることになります。
日本国中の書店に入り込む成瀬をぜひ見てほしい
語るべき成瀬あかり史はまだまだたくさんあります。皆様の新鮮な目で続きを読んでいただければ幸いです。「なるせーーー!」と叫びたくなるようなシーンも待っています。
できればお近くの本屋さんで買って頂きたいところ。滋賀だけでなく日本国中の書店員さんがしのぎを削って『成瀬は信じた道をいく』を並べておられるでしょう。力の入れ具合も見てほしいのです。
成瀬あかりファンはあなただけではないんだよ、みらいちゃん。
私も密かにお店のXを更新予定です^^
新潮社さんが成瀬の新たな特設サイトを立ち上げられておられます↓
表紙のイラスト ざしきわらしさんの効果
成瀬あかりの魅力を世に知らしめたのはもちろん宮島未奈先生なのですが、表紙を飾るイラストが偉大な力を発揮しているのは間違いありません。
一点を見据える成瀬の力強い眼が印象的な、ざしきわらしさんのイラストです。
成瀬と出会ってから山本文緒さんの文庫本や東京リーガルマインド「公務員試験」のこの女の子も、ざしきわらしさん⁉と目に飛び込んできました。
InstagramやXで、ざしきわらしさんは多くを語りません。代わりにたくさんのイラストたちを見ることができます。しっかり前を見据えるカラフルでおしゃれな女の子たちを眺めているだけで気持ちが上がりますね。
ざしきわらしさんも第2弾となるイラスト作品集を出されましたね。成瀬の勇姿も載っています!彼女が描く女の子は、ほんとかわいい♡そして強い!
『成瀬は信じた道をいく』の表紙は「びわ湖大津観光大使」のタスキに制服姿の成瀬。私たちを見おろしています。
ああ、成瀬の感情が読めない。読めないけれどちょっと大人になった成瀬からやっぱり目が離せない。そんな表情をしています。
成瀬とざしきわらしさんのマッチングを決定した新潮社さんはほんとうにすごいなと思っています。もうこの成瀬以外のお顔は考えられないもの。
新潮社でのシリーズ化は成瀬あかり史の手始めに最適
新潮社さんは第1作目の発売前からしっかり成瀬を売り込みました。サンプル本を読んだ書店員さん、実際の書籍を読んだ皆さんが一気に成瀬のファンになりました。
きっと第2作目もたくさんの人に読まれることでしょう。ざしきわらしさんの成瀬像とともに、シリーズ化することを誰もが期待しているのではないでしょうか。
同じく新潮社(新潮文庫)知念実希人さんの「天久鷹央の事件カルテ」シリーズのように息の長い連作となるに違いないと、イメージしています。そのためには第2作目が沢山の方のもとに届くかどうかにかかっているでしょう。
ここまで読んで頂いたあなたにもぜひ成瀬の2部作(今のところ
)を通してお読み頂きたいです。成瀬は完璧な女の子のイメージが強すぎて、第1作目を読み返すまで「うろたえる成瀬」のことを忘れていました。
相方の島崎が遠く離れるかもしれないという場面でのこと。簡単な数学が解けなくなったり日々のルーティンがこなせなくなったりします。
あの成瀬あかりもメンタルやられちゃったんだな、でもすぐ立て直すけど。
それなら私たちがちょっと落ち込むのは当たり前だな。成瀬に倣って一歩踏み出そう。
人間味のある成瀬の姿に安心し、前向きな気持ちを置いて行ってくれる。それが成瀬あかりなのです。
そうでなくっちゃ、成瀬あかり。