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『砂嵐に星屑』一穂ミチ氏。自分だけの星を見つけること。

『砂嵐に星屑』一穂ミチ 幻冬舎 本が読みたくなる

一穂ミチさんには深〜い固定ファンがついているのは何故かしら?とこのお話を読んでみました。大阪の民放テレビ局で働く人たちのオムニバス小説、春夏秋冬4つの短編たちです。華やかさやカッコよさの裏で、みんな泥くさく汗まみれで人知れず泣いています。葛藤して悩んで、それでも今日も出勤します。

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『砂嵐と星屑』一穂ミチ 幻冬舎

在阪テレビ局で働く人々


大阪は福島にある民放のテレビ局(ってあそこやん?)、堂島川のほとりのイカした自社ビルの中。テレビ局のお約束や習慣、番組制作の一旦も垣間みられることも楽しい。読み手にとって興味深い題材なので、すっと物語の中に入っていける。

東京のキー局への出向から10年ぶりに戻ってきたアナウンサーの女性、三木。どうやら不倫騒動で異動になっていたらしい…。そんな彼女への冷ややかな目と大阪っぽいノリツッコミ。飛んでくるヤジを笑いに変える瞬発力も求められて、彼女は辛そうだ。

何年経っても全く精算されていない問題に、しかし三木は意外な形で向き合うことになる。

彼女のお話から見えてくる、人それぞれ大切にしているもの。他人からみれば「えええー!それー⁉︎」と言われる類のこだわりかも知れない。取るに足りないことに固執するのが人間で、だからこそ人との出会いは新たな視点を生む。

三木は自分とは正反対(空気読まない。嫌なことはしない。笑わない。忖度しない)で反目しあっていた若い部下に救われる。バディものやコメディの様相もあるが、根底には性差や女性同士のねたみも組み込まれ、話が奥深くなっている。

自分を見下してしまう気持ちと戦う人々



自分が息ができないと感じている時には、周りの人たちを恨む気持ちになる。誰でも経験するけれど、みんな上手く消化したり浄化したりできているんだろうか。

4つのお話で出てくる人々も、それぞれに違う悩みや葛藤を抱えている。不倫、おのれの行く末、通じ合わない恋と秘密、そして仕事そのものに対して。誰にも打ち明けずに耐えていたり、身近な存在にぶち撒けて後悔したり。

どんな形で表に出したとて、先が見通せないうちは、心が疲れるばかりだ。

もちろん、うやむやのままでお話は終わらない。
地道なロードムービーの感のある章は主人公も読み手も汗と涙でべったべたになる。そのどろどろの状態から見上げる空はまぶしいくらい青い。

仕事との相性に悩む主人公には手を差し伸べる人が現れる。それは決して優しく導く類の助っ人ではない。敵にすら見える。あえて敵である場合もある。弱っている自分を攻撃してくるような。強すぎる彼らの言葉に反発し、自分のなすべきことを見定めていく。

見上げた空の星


登場人物は周囲を巻き込み、涙も流す。そこからどう浮上するのか。それも人それぞれ。テレビ局という大きな枠組みで働くひとりひとりが、少しずつ接点を持ちながら、つかず離れず助け合う。

そして歩き出す。空を見上げる。各章で星がきらめいている。
特に最終章では、心をかき乱される星を見ることになる。

「薄い関わりでも縁は縁で、思いがけず誰かの魂にそっと指先が掠める瞬間というのは確かにあり、自分が望むと望まざるに関係なく、尊い一瞬だと思う。」

まるで金言のような一文が、軽妙な会話劇の合間に挟み込まれる。

一穂ミチさんの濃い読み手はそれを愛しているのだと思った。

春夏秋冬、読み手は悩める人々と共に季節を巡って、悪くない一年だよな。と思える。自分自身にとっての“星”を見つけたいな。そんな4つのお話だ。

 

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